2009年5月11日月曜日

act.2 新宿

近頃はどの店でも配っているポイントカードで財布の中身がいっぱいだ。

電器量販店3枚、に始まり、
デパート4枚、コンタクト屋、古本屋、DVDレンタル、インテリアショップ、古着屋、ドラッグストア3枚、スーパーマーケット5枚..

クレジットカードを遥かに越える枚数のポイントカードが常に待機している。


しかし先日、また新たに作ってしまった。

棺桶販売店だ。

私は普段、棺桶で寝起きしている。
あの、狭く遮断された空間はとても心地が良い。
初代のベッド(棺桶)は、もう10年近く使ったので愛着もあるが、久々に新調したくなった。

こんな嗜好は誰にも言えなかったが、
どこかの映画作品で一人暮らしの女性が使用しているシーンがあり、
他にも利用している誰かが存在する可能性があることを知った。
そのうちに親しい誰かに告げても良かろうと思っている昨今だ。

さて、新調するにあたって
10年前に初代を購入した棺桶販売店がまだ潰れていない事を確認し
その週末、早速店に出向いた。

店は少しポップな印象になっていた。
数年前にイメージアップをはかり改装したようだ。

店内に入ると所狭しと棺桶が並んでいる。
うきうきと棺桶を眺めた。

そして一台、入ってみて(試入棺)しっくりきたものがあったので
購入を決めた。

爽やかで清潔感のある店員が、配送票作成や納期の確認などを
てきぱきとすすめていった。

そして訊かれたのだ。
「ポイントカードはお持ちですか」

思わず、ないですと言ったが、
棺桶屋のポイントカードなど、存在自体想定している人は少ないと思う。

「ではお作りしますか」

とっさに計算をした。
何を元に計算したかは曖昧だが、棺桶は値の張るものだ。
きっとすぐにポイントは貯まるだろう。
ポイントの付与される割合だとか、
貯まったらどうだとかいうことを訊かずに決めた。
もちろんイエスだ。

店員は説明を始めた。

そしてプラスチックのカードを用意し
バーコードを読取った。

「お客様、本日は988ポイントお付けします」

続けてこう言った。

「でもあと12ポイントでオリジナル棺桶がひとつサービスになりますよ!」

12ポイント...あと少しではないか。
ちょっと待って、と言い、私はまた店内を物色し始めたのだ。

店員に相談した結果
小さいお棺がよろしいのではないでしょうかという言葉に同意し
それを追加した。

かくして一人暮らしの私は
旧ベッド(棺桶)1台、新ベッド(棺桶)1台と、サービスでもらったオリジナル棺桶1台、
12ポイントのために追加したミニ棺桶1台と、都合4台の棺桶を1LDKの部屋に入れたのである。

部屋がとてつもなく狭くなったのは言うまでもない。

今は愛着のある旧ベッド(棺桶、ときどき使用している)を処分すべきか悩んでいる。

ポイントシステムは本当に恐ろしい。

しかしそのポイントカードを捨てる訳にはいかない。
なぜならまた購入し、貯まるかもしれないからだ。




2009年5月9日土曜日

act.1 渋谷



今日、渋谷でピンヒールのサンダルを
片方だけ履いて歩いている女の人を見た。

もう片方はどこに?

よく見ると片足のサンダルは手に持っていた。
瞬時に中島みゆきの歌を思い出す。

彼女はぎんぎらぎんのゴールドのミニドレスを着ている。
一目でわかるチープなパーティ姿。
安い水商売の女の服装だ。

気になったのは
サンダルを履いていない方の足(ストッキング)もピンヒールに合わせて浮かせて歩いているところ。
高低差があるのでその歩きかたがラクなのだろう。

ぎんぎらの服装の彼女が、ヒールの高さ(想定12cm)に合わせてぴょこぴょこ歩くので
かわいく思えてきた。

そのうちに立ち止まり、彼女はケータイをかけはじめ、
相手が出たであろう次の瞬間からめっちゃくちゃに怒鳴りはじめた。


私はさりげなく遠くから、コッソリと写真を2枚撮った。

帰宅してからその写真を良く見たら
2枚とも彼女が写っていない。

確かにその建物の前、入り口の右に立っていたのに。

まさか幽霊かとも思ったが
ひょこひょこ歩きの、片足ピンヒールの、ぎんぎらぎんの、
アゲアゲヘアーの、人目も気にせずケータイに怒鳴りまくっている、
あんなに存在感のある幽霊なんて絶対にいないであろう。